大阪高等裁判所 平成3年(行コ)42号 判決 1992年8月27日
控訴人(原告) 有限会社大東洋生コン
被控訴人(被告) 大阪府地方労働委員会
補助参加人 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が大阪府地方労働委員会昭和六二年(不)第三七号及び昭和六三年(不)第六八号併合事件について、平成元年一二月一三日付でなした不当労働行為救済命令(以下「本件救済命令」という。)はこれを取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
事案の概要は、当事者の主張として、次のとおり加えるほかは原判決事実及び理由第二(原判決二枚目表四行目から五枚目表九行目まで)のとおり(但し、原判決二枚目表八行目「日高輝男」を「日高輝雄」と改める。)であるから、これを引用する。
一 控訴人
1 過積載拒否と賃金
控訴人と被控訴人補助参加人(以下「補助参加人」という。)との間では、昭和六〇年六月二一日、賃金(夏季及び冬季の一時金を含む。以下同じ。)及び残業手当の支給について、就業規則に基づく従来の賃金体系を変更する労働協約が締結された(乙二六、二七)が、右変更後の賃金体系によれば、過積載を行うことを前提に、残業の有無を問わず、賃金と残業手当が支給されることになっている。
控訴人は、昭和六二年四月からは、錦戸憲二に対しても、残業の有無を問わず残業手当を支給しており(甲一)、過積載拒否を理由とする賃金差別は行っていない。
2 過積載拒否を理由とする残業手当の不支給と不当労働行為の成否
控訴人が、補助参加人組合員に残業手当を支給しなかったのは、昭和六一年初めから同六二年三月までの、補助参加人による過積載拒否闘争の争議状態が恒常化していた時期のみである。
それ以後、平成元年一二月の本件救済命令がなされるまでの二年八か月間は、残業の有無を問わず残業手当を支給してきたし、現在錦戸に対しては、同人が過積載を拒否し、運転業務以外の業務を行っていないのに、三〇万円以上の給与を支給している。
二 補助参加人
錦戸憲二は、従来の手取り額より格段に低い給与しか得ることが出来ないことが長期間に及んだため、やむを得ず昭和六二年四月から重量規制道路への進入、昼の休憩時間中の就労に応じ、以後残業補償手当が支払われるようになった。
しかしその後も、控訴人は、過積載運行や昼の休憩時間中の就労をしない者に対する差別的な取扱いはしない旨明言したことはなく、また現在でも「賃金及び残業手当の支給は、過積載を行うことを前提としている」旨主張しているし、現実に過積載を拒否していることにより、現在も組合弱体化のための方策が行われている。
なお、平成三年五月一三日以降、控訴人は、錦戸を一切出荷業務につかせず、毎日小型マイクロバスで待機させており、不当労働行為が継続されている。
第三証拠関係<省略>
第四争点に対する判断
当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加するほか原判決事実及び理由第三(原判決五枚目表一一行目から八枚目表一〇行目まで)と同一であるから、これを引用する。
控訴人は、昭和六二年四月からは補助参加人組合員錦戸憲二に対し、残業の有無を問わず残業手当を支給しており、過積載拒否を理由とする賃金差別をしていない旨主張する。
しかし、前記認定の事実によれば、控訴人が錦戸に対して残業手当を支給するようになったのは、錦戸が、昭和六二年四月ころから配車割当について差別取扱いを受けて長時間待機するのに耐えかね、待機時間中に雑用をするようになり、また、給料の低下に耐えられず、三トン規制道路への進入と休憩時間中の就労に応ずるようになったためであり、その後も控訴人の指示の下に、一週間に二日ほどは出荷割当てされず、従来は外注で処理されていた出荷業務以外の雑務に従事させられていたものであって、控訴人は、同月以降もなお配車について、過積載拒否を理由として差別を継続していたものである。
そのうえ、前記認定の同月以降の控訴人と補助参加人組合との団体交渉の経緯や控訴人が違法な過積載を行うことが労働協約に基づく賃金及び残業手当支給の前提である旨の主張を継続していることから考えると、前記の控訴人の不当労働行為は単に一回だけのものではなく、被控訴人の審問終結当時において、将来同種もしくは類似の行為が繰り返されるおそれが多分にあったものと認められるから、被控訴人は、予めこれを禁止する不作為命令を発することができると解するのが相当であって、控訴人の主張は採用できない。
以上によれば、本件救済命令は正当であり、控訴人の本訴請求は、理由がないから、これを棄却すべきであり、これと同旨の原判決は正当であって、本件控訴は理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 山本矩夫 福永政彦 古川行男)